ネットリンチが「正義感の暴走」なら、レイプは「愛情の暴走」、児童虐待を「教育の暴走」と捉えることも可能である。

 

このような言説が流行してしまった考えられる理由。

 

1.アメリカへのルサンチマン

 

正義への懐疑が現代日本のテーマであり、この言説が多くの日本人に満足感を与えている。

戦争責任を拒絶し、大日本帝国の未開な価値観を温存する日本人は未だアメリカを憎悪し、「大日本帝国は正義を狂信するアメリカに侵略された」という被害者意識を抱き続けている。

 

現代日本人は正義をアメリカからの輸入概念と見なし、正義を積極的に攻撃し、排斥することこそがアメリカへの効果的な反撃だと信じている。

(この手の連中は正義を文章にするときわざわざ「」をつけて「正義」と記述する。正義を映画のタイトルのようなものと見なしているか、現実離れした概念であることを強調したいらしい)


  『白人は狩猟民族だから野蛮、日本人は農耕民族だから温厚』、『一神教の白人は野蛮、多神教の日本人は温厚』といった妄言が平然と受容され、

アメリカに卑劣な先制攻撃をしかけたにもかかわらず「多神教で農耕民族の温厚な日本人は狩猟民族で一神教の野蛮な白人によって壊滅させられた被害者だ」という被害妄想を肥大させてきた。

 

この日本人の観点を決定的なものにしたのは、2003年にイラクが大量破壊兵器を所有しているという虚偽を口実にしたアメリカのイラク侵略であり、日本人が持つ「狂信的で破壊的なキリスト教徒」というイメージを増長させ、イラク戦争への懐疑と批判が敗戦の被害者意識の強化と結びつき、

日本人は通俗的に歪曲された仏教の虚無主義とアメリカへのルサンチマンを継ぎ接ぎした相対主義、懐疑主義の妖怪のような存在へと成長を遂げた。

 

イスラム教vsキリスト教という明快な対立構図の水面下で従来の反米運動とは別種の、不可視で、コントロールも制圧も困難な、混沌・虚無の偶像を崇拝する宗教勢力「ニホンジン」が極東アジアの一画で活性化した。

 

「ニホンジン」とは『指輪物語』に登場するオークのような種族であり、緩慢ではあるが着実かつ広範囲に正義、絶対的な善、果ては男性ホルモンに至るまで唯一神に連なるあらゆる観念の汚染を企て、キリスト教国の覇権を揺るがそうと狙っている。

奴らのあらゆる政治的立場は混沌と虚無の偶像を崇拝する汚れた民族意識に奉仕する。

 

 

リベラルを自称する勢力も「かつて日本は『テンノー』という唯一神を創作し信仰したから自滅した。だから一神教とそれを支える絶対性の観念を否定することは進歩的文明人としての洗練された態度である」と信じている。

 

自分たちが信じた神が本物であったか偽物であったかの観点の欠如を披露するだけで、一神教というフレームの問題視に終始するだけで事の本質を把握しようとしない。

これらは「列強国は一神教という方法論を採用しているから多くの植民地を獲得できた。だから日本も「テンノー」という一神教を強化して植民地を獲得しよう」という神を人間の政治運用のための創作物と見なした戦前日本の不信仰の感性を忠実に継承したものである。